
【第1回 鑑賞実践講座】
日時|2025年7月26日(土)10:00~15:00(昼休憩1h)
場所|愛媛県庁 第一別館6階トライアングルベース
講師|春日美由紀(Art & Communication Lab. うるとらまりん主宰者 京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センター共同研究者)
今回から鑑賞実践講座がはじまりました!
鑑賞実践講座では作品をはじめ物事を鑑賞するときの「ファシリテーター」の力を伸ばしていくために実践をしながら学びを深めていきます。
まずは、5月14日に実施した「第3回基礎講座 アート作品を鑑賞するとは」で学んだ対話型鑑賞の手法をおさらいしました。


次に、スイカをモチーフにした作品をモチーフに、「アイスブレイク」を行いました。春日さんからは、2人以上で行える「アイスブレイク」をするためのネタを幾つか持っておくと良いとの助言があり、3月の第7回目までにそれぞれが自分の「アイスブレイク」を見つけることが宿題となりました。確かに、アイスブレイクをする前とした後では、ひめラーたちの緊張感がほぐれた感覚がありその効果を感じました。どのようなアイスブレイクを考えて来てくれるのかとても楽しみです。


「対話型鑑賞」の学びを進めていく中で、春日さんは「みる」→「かんがえる」→「はなす」→「きく」の4つのステップを回していく手法で取り組んでおられます。ひめラーに特に期待していることは「対話力のアップ」と「論理的思考力のアップ」であることが挙げられました。「どうして?」や「どこからそう考えたか?」といった問いを大事にしていくこと、また、参加者が賛同できなくても、話を深めていくことで、納得できる解へ導くことが「ファシリテーター」の役割であることを教わりました。
これまでに学んだ「場作り」とあわせて、ファシリテーターの“ふるまい”についても学びを深め、どのように会話が展開していくかを紐解いていきながら、ちょっとした言葉の選び方や話し方によって、深い鑑賞を行えることがわかりました。さらに、対話を立体的に展開するための視点や問いかけの仕方についても学びを深めます。


続いて、実際に春日さんがファシリテーターとなり、ひめラーが鑑賞者、観察者に分かれて対話型鑑賞を実施。ファシリテーターがどんな振る舞いや問いかけをしているか、様子を見ていた観察者のひめラーからの気づきでは、「問いかけに幾つかのバリエーションを作っていて、機械的ではなく言い換えることで新鮮に聞こえる部分がよかった」や、「作品の中に描かれているモチーフの見る視点を変える工夫で、よりモチーフを違う角度から見ることが出来た」また「手振りや表情でも、話題を引き出しやすく、また楽しそうな雰囲気を作っていて、さらに洋服も作品に集中できるように目立ちすぎない工夫があるのではないかと思った」と様々な感想が出てきて、これからひめラーたちがファシリテーターをしていく上でもとても良い気づきの時間となりました。

対話型鑑賞の実施後、春日さんからファシリテーションについて、「鑑賞を効果的に行うための働きかけ」であることのほか、「合意形成や相互理解をサポートして、組織や参加者の活性化、協働を促進させ作品の納得解を創出することができる」というお話がありました。この考え方はアート鑑賞だけではなく仕事やプロジェクトにも置き換えることができるというお話もあり、自分自身でも無意識に使い分けながら発言をしているかもしれないということに気付かされました。


講座の後半では、次回以降の実践講座で実際に鑑賞する作品から、ファシリテーションしたい作品を選ぶ時間、また、春日さんのファシリテーションをひめラーなりに分析して、より良いファシリテーションについて話し合いました。「自分の知っている作品と絵を結び合わせて見ていたけど、他の人の意見を聞いて視点が広がった」といった発見があったようで、その話を聞いてさらに他のひめラーも関心をしており、まさにそれぞれの思考に影響を与え合っているなと感じました。

また、愛媛県美術館所蔵作品100点を使ったアートカードを用いて、「新しい遊び方を考える」ワークも行いました。ひめラーなりに、説明書には書かれていない新しいルールをつくることで、グループ内での納得解を見出したり、アイスブレイクのネタ探しにも繋がります。試行錯誤しながらも楽しんでルールづくりをする様子が見られました。


春日さんが「対話型鑑賞は簡単ではありません」と何度もお伝えいただいたと同時に、作品を見て何か答えがあるというものでもないので、何を到達地点としていけばいいか難しいというひめラーからの感想がありました。ただ、講座を重ねるごとにひめラーたちが徐々にファシリテーターのコツを理解を深めてきている様子も感じられます。地域の方々と関わっていく際にも、この対話型鑑賞の手法を応用しながら関係性を築いていくことはとても重要となってくると思うので、ぜひこれからの実践講座でもどんどんファシリテーションに挑戦をしてスキルを上げていって欲しいと思います!
(art venture ehime 運営スタッフ 竹宮華美)